ウオップパラダイス: 謎の電話

2010年1月29日金曜日

謎の電話


呼び出し音で目を開けると、部屋は真っ暗。
まだ夜明け前の時間に携帯電話が鳴っていた。
いやな感じで携帯を探りよせる。
暗い時間に鳴る電話は、たいてい悪い知らせだから。
着信表示には、ある小さな制作会社の社長の名前。
こんな早くになにごと? と、思い当たるのは納期
のせまった作品の編集作業中、パソコンに不具合で
も起きて、急遽、機械を貸してほしいというような
ことかと思う。
以前にも同じようなことがあったので。
しかし、「もしもし…」と、応答しても相手は返事
をしない。
ただ、しゃわしゃわ、と衣擦れのような音が聞こえ
てくる。
なんど応答しても返事がない。
しゃわしゃわ、の音は聞こえてくるが…。
しかたないので、事務所にいるのだろうと携帯を切
って自家電でかけてみる。出ない。
こんどは社長の携帯電話にかけてみる。
留守番電話の応答になっている。
怪訝に思うが、こんなことならさほど急ぎの用でも
ないのだろうと寝てしまった。

昼前になって事務所に電話してみると、社長はそん
な電話をかけた覚えはないという。
え? そんなはずは…、ときょう事務所をたずねた
折に確かめてみると、社長の携帯電話(写真)には
僕の携帯電話への発信履歴(午前6時23分)があ
った。
だから、この電話から発信されたのはたしかだ。
ところが、ふだんから携帯電話を持ち歩かない社長
は、その日も携帯電話を事務所の充電器に差したま
ま帰ったという。
…???

夜明け前の事務所にだれがいたんだろう?
空き巣でも入って、携帯電話をつかったのだろうか?
でも、なぜわざわざぼくの携帯電話に電話してくる
…?
超常現象でも起きたかと笑い飛ばしたいところだけ
ど、電話があったのは事実だし、あの衣擦れの音も
たしかに聞いたのだ。
これは…! もしかして現代百物語『新耳袋』に加
えられるエピソードのひとつとなるのかしらん!!!


ほんとにだれ?
だれが電話してきたの?!?!?!

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