終わった、やっと。
腰から背中にかけて固まったような
筋肉をほぐそうと、のびをしたり前か
がみをしたり、ぐねぐね腰を回したり
していた。野球でいう千本ノックを受
け終えたような、もうその場にヘナヘ
ナと崩れ落ちてしまいたいような気分
だった。
呆然と立ち尽くしているその間にも
長さ7、8メートルほどのコンベア台
をガチャガチャと移動させ、新たなラ
インが組み立てられていく。ラインの
両脇には具材や、クリームやソースと
いった材料が盛られたアルミの箱が
一定間隔で設置される。そしてその箱
にそって人員が配置される。
またすぐ始まるのか、と挫けそうな気
持ちを無理やり奮い立たせ、動き出し
たコンベアに流れてくる材料を待ちか
まえる。
今度は丸く開いたパン生地に焼きそば
のような具材をのせて閉じるといった
作業だった。いちど担当の社員のよう
な人が手本を見せて、「はい、やって」
と促される。作業はかんたんだ。とこ
ろがそのスピードがとてつもなく速い。
ちょ、ちょっと待って。せめて初めは
練習させるつもりの心遣いはないのか。
そんなものはない。パンは容赦なくマ
ッハのスピードで流れてくる。
何度か半分に折る作業が追いつかず、
パンの脇から具材が飛び出す。
「こんなかんたんなこともできないの
?」社員が脇から手を伸ばし、ほら、
ほら、とまた手本を示す。
屈辱。わかってるよ、スピードさえも
う少し緩めてもらえれば。せめて練習
の時間を与えてもらえれば、と胸の中
でつぶやく。
白っぽいパン生地と具材の茶色味を帯
びた色彩が、目の前を次々と流れてゆ
く。まあるい視界の外側からだんだん
と白っぽい輝きが広がってくる。世界
ぜんたいが眩しい輝きにつつまれる。
ああ、失神するのかな、と溺れそうな
胸苦しさの中でそう思った。
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